#[PR] |
CATEGORY : [] |
#一周年&一万年企画 |
CATEGORY : [詩/ネタ] |
その2でございます。
右手に鏡を、左手に刃を握り締め、私は目の前に立ちすくむあなたを睨んだ。 ―――どうして、そんな笑みで、いられるの? あなたは口元にかすかな笑みを浮かべて、あの眼差しで私を見つめていた。 「寒いの?」 そう、と軽く頷いてあなたはゆっくりと目を伏せて私に一歩近づいた。 「動かないで!――それ以上私に近寄らないで!じゃないと、私…私、あなたを…!」 私は目を見開いてあなたを凝視した。伏せた目を持ち上げ、あなたは真っ直ぐな黒い瞳で私の目を見つめる。――どうして、どうして…?! 「――それが、世界を救うと信じている愚かなヤツらがいるからさ。だから、君の心が犠牲になる。――僕を大切に想っている心を知っているから。」 あなたはまるで私の心を読んだかのように、今まさに自問した問いに答えた。私は自分でも吃驚するくらい過敏に頬を赤くした。 「…じゃあ、なんで?!どうして、そんな事言うの?!私があなたの事…!」 だからなんだ、とあなたはもう一度言った。 「ごめんね。でも、僕は信じてるんだ。君が、僕がいなくても、一人でも大丈夫だって…信じているんだ。」 嘘よ、という言葉をつむぎだす前に、私の唇はふさがれた。 「な、なんで…!」 あなたの身体に深く突き刺さる刃。私の左手は真っ赤で、彼の体から知が滴る。あなたはうっすらと笑みを浮かべて私を見ていた。 「あなた…絶対、アホだよ…。」 カランと、刃は地面に転がった。同時に右手の鏡も手をすり抜け、ガシャンと地面と衝突し、粉々に砕け散った。 「こ、れは秘密、だったん、だ、けどね、僕は、死な、ないんだよ、」 フフ、とあなたは血まみれの手で私の頬を数度撫で、にこりと笑みを浮かべた。 「来世で、待ってるから。君は、ちゃんと現世を生き抜くんだよ、」 寿命まで。 「私は一人でも歩き続けるから、だから、その日までずっと見守っていて。」 ――破ったら、たぶん、許さない。 PR |
|
コメント[ 0 ] トラックバック [ ]
|
COMMENT |
COMMENT WRITE |
|
TRACKBACK |
トラックバックURL |
忍者ブログ[PR] |