その3でございます。
ぴ、とドアロック解除の音がして、あたしは真っ直ぐ迷う事無く、船に設置された簡易ベットにダイブした。
隊長クラスだともっと良い部屋があてがわれるのだが、どうせあたしは平だ。ベットのスプリングも悪く、硬い。更に汗をかいた体がベタベタして気持ち悪くて吐きそうだ。
それでも、いい。と思えるほど、あたしはとにかく、早く眠りたかった。
今さっき、見た光景を、夢だと、思いたかった。
『××××――っ!!!!』
あたしの叫び声が、狭い空間に響く。
アイツは、砂嵐の酷いモニターの中で、口の端から血を流しながらあたしを真っ直ぐ見て、笑みを浮かべた。
『お前は、生きろ、よ…?俺が、いなくても、な?』
それが最後。
それきり、アイツは見ていない。
糸が切れたマリオネットのように地面に崩れ落ちて、動かない。助けに、行きたかった。しかし、今は作戦行動中だ。個人の勝手な行動は更に仲間の危険を引き起こす。
大きな爆発音が、あたしの目の前で起きたんだから、生きてるはずがない。万が一、という可能性を考えたけど、あたしは頭を振る。
――そんな事はありえない。だって、あたしの目の前で撃たれ、あのオレンジの髪をふわりと揺らしながらあたしがいる方向を見て、生きろ、といったんだから。
今頃、アイツの同室の彼が遺品を整理しているんだろう。人一倍心配性で、仲間思いで、優しくて、…。
でも、彼の行動は一体どうしたの?まさかアイツの仇をとりに行ってくれたの?…まさかね。
それに対して、あたしはアイツの恋人、という立場でありながらなんて様だろう。彼のように命令違反までして出撃したわけでもなく、遺品の整理をするわけでもなく、ただ、夢だと思いたいがためにこうして、ベッドに横たわっている。思わず自嘲した。
「ごめん、あたし、アンタがいないと無理だよ。」
――だって、あたし、そんな単純に出来てないから、一人じゃいられない。
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