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2017年10月21日  23時05分
一周年&一万年企画
CATEGORY : [詩/ネタ]
・・・の時の、ファイルを発見しましたので、アップします。
改めてページを作ろうかと思ったんだけど…。

ブログを有効利用しようかな、と思いまして(ぁ

って事で、追記から読めます。
ちなみに、名前変換無しです。
 ゆっくりと暗転していく世界の中で、俺は力の限り手を伸ばした。
 聞こえてくる、生まれたばかりの赤子の鳴き声。その腹にしっかりと刻まれている封印呪を見て涙が流れそうになった。

 ―――ごめん、ごめんよ。俺が弱かったから、力がないから、君を不幸にしてしまう。

 もし、強さがあったなら、力があったなら、こんな事にはならなかっただろうな。
 俺はうっすらと口を開けて最期の力を振り絞り、動かした。声にならなかったと思う。俺を囲むやつらが懸命に俺を呼ぶ。
 俺は自嘲する様に笑った。

 人は死ぬ間際に走馬灯を見る、というのは本当なんだと客観的に頷いた。
 生まれてから今まであった事が脳裏に浮かんでは消えてゆく。その中でも、一際印象的なのはあの社で見せられた、棺の少女。
 時を止めた少女は美しい、という形容詞がピッタリだった。見た目は俺よりも二周りほど小さい少女なのに、実の年齢は俺よりも二周りも上だと言うのだから、びっくりだ。
 さらりとした手触りの良さそうな髪に、ふっくらとした頬、赤い唇。もう何十年も物を摂取していない筈なのに、まるで少し仮眠を取っているような、そんな錯覚を覚えさせられる。

 俺は初めて社に連れられて行った以来、押し寄せる激務の合間に時間を見つけては彼女の顔を見に行った。
 彼女の名前を知らない者はいない。もちろん、それは俺もだ。彼女の名は、恐らく一生忘れる事が出来ないだろう。しかし、俺は、あえて彼女の名前を呼びはせず"眠り姫"と称した。

 ―――眠り姫は一体どの王子のキスを待っているんだろう。

 ある時、俺はふとそんな事を思い、少し後で照れくさくなった。
 我ながらくさい科白だ。だがそう思わせるのは、眠り姫だから仕方がない。どんな瞳の色で、どんな声で、どんな笑顔を見せるのか、そればっかりが気になるのだから。
 しばらくして、俺は結婚した。
 相手の女性は、本当に俺好みで文句の付け様もない。ただ、何故か後ろめたい気持ちになった。こっそりと眠り姫に会いに行っているからかもしれない。

*

 その日も、いつもと同じ日常になるはずだった。
 朝、大きなベットで目が覚め、もうすでに起きている嫁さんに挨拶して、お腹の子にもおはよ、と声をかける。臨月を迎えている嫁さんは何時出産してもおかしくない程大きなお腹を抱えて家事に勤しんでいる。俺がお手伝いさんに頼もう、と言っても、嫁さんはかたくなに拒否した。仕方なく俺は譲歩して、朝ごはんは嫁さんに作ってもらい後はできる事だけをしてもらい、少し面倒な事はお手伝いさんにしてもらうようにした。
 舞い込んで来る仕事をこなし、俺は休憩時間に社へ赴く。門に立つ人に今日もですか?と呆れられながらも、俺はそれに笑みで返し、中へと入った。
 嫁さんの傍も、心地よいけれど、眠り姫の傍は何故か心の底から安心できる場所だった。まるで母親に抱かれているみたいに安らぐ場所。
 持ち込んだ椅子に腰掛けて、目覚めない眠り姫の寝顔を、俺は休憩時間ギリギリまで見つめる。そして何の前触れも無く、眠り姫の小さな唇に自身のを重ねてみた。一瞬だったが永遠のように感じた。眠り姫は目覚めない。俺は眠り姫から離れ、今の感触を思い出すように自分の唇を手でなぞった。
 窓から差し込む西日がだんだんと細くなり、俺の休憩時間終了の合図を出すと、同時にずしんと、重く響いた地響きがした。
 何事だ、と社から外をうかがうと、奴はいた。俺は社の中に眠り姫以外がいないことをいい事に普段めったにしない舌打ちを大きく鳴らした。こんな所を他の人に見られて問題はないが、その人の"俺"という人物像を大きく壊すことになるだろう。それも、面白いかも、とこの非常事態に俺は頭の片隅で考え笑みを零した。
 俺を呼ぶ声が響く。
 俺が行くまで、持ちこたえろと指示をだし、俺は戦闘準備に入る。
 そういえば、嫁さんの姿がないな。すこし不安になりながら、一巻の巻物を手に部屋を出ようとすると赤子が生まれた、と唐突に告げられた。
 嫁さんと、赤子がいる部屋に俺は飛び込む。赤子は大きな産声を上げて泣く。嫁さんは、眠っているようだった。俺はどうやら女の寝顔が好きらしい。ほんの数時間会えなかったがその寝顔に酷く安心した。きっと眠り姫のせいだ。
 だが、俺に赤子誕生を告げた者は難しい顔をして俺を見る。そして、嫁さんは赤子と引き換えに死んだのだと、苦しそうに告げた。

 ―――ばちが、当たったんだ。

 俺はそう、思った。そうか、そうだったんだ。
 俺は、嫁さんを貰う前から、眠り姫の事が好きだったのだ。そして、眠り姫の事を想いながらも嫁さんとの日々を送り、さっきの出来事を思い出して、顔を覆った。
 俺を呼ぶ、声が絶えない。
 俺は赤子を布でくるみ、部屋から出た。奴は好き勝手に暴れたようで、地形が少し変わってしまっている。
 奴の目の前に立ち、俺は赤子をぎゅと抱きしめた。そして、こっそりと涙を流す。
 太陽のような明るい髪に、空色の瞳。あぁ、なんてこの子は俺にそっくりなんだろう。ごめん、と俺は心の中で謝った。
 右手に巻物を、左手に赤子を抱いて俺は奴に向き合う。
 そして、一瞬のうちに、全ては終わった。

 ゆっくりと暗転してく世界の中で、俺は力の限り手を伸ばした。
 生まれたばかりの赤子の声が聞こえる。その腹にしっかりと刻まれた封印呪を見て、涙が流れそうになった。
 一瞬、我が子が光ったように見えた。俺の見間違いで良い。それは確かに翼のようだった。身勝手な大人の都合で、これから多大な苦労を背負うであろう我が子だが、その未来に光を見た気がして、俺は笑みを浮かべた。
 俺は、眠り姫がどんな気持ちになったのか、眠り姫の付き人はどんな気持ちだったのかを、この時突然理解した。今まで、いろいろな媒体を通して眠り姫の武勇伝を聞いてきたが、本当は眠り姫の事など何も知らなかったのだと。
 あなた、と俺を呼ぶ声が聞こえる。嫁さんだった。にこりと笑って俺を手招く。俺を許してくれるのか?
 嫁さんは、許すも何も、最初から知っていたと笑って言うものだから、俺は目を見開いた。そして、俺に、私はあなたの妻だったのよ?あなたの事なんてなんでも知ってるわ、あなたしか見ていなかったから。と頬を染めて俺に告げた。この時、俺はようやく、心からごめん、と謝罪した。嫁さんは笑って気にしないでと俺を許す。

 私は大丈夫。だって、あの方が私達の子供を守ってくれるから。

 嫁さんはにこりと俺に言い、同意を求めた。俺も、それに頷く。
 そう、あなたなら。守ってくれる。だから今度は、俺が嫁さんと二人であなたを守ろう。

 「×××××」

 俺の意識は完全にブラックアウトした。

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2008年09月11日  00時35分
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